-心臓・心房中隔欠損症のカテーテル治療-


心臓・心房中隔欠損症のカテーテル治療

心房中隔欠損症

心房中隔欠損症は、心臓の左心房と右心房を隔てる筋肉の壁(心房中隔)に、生まれつき穴があいている病気です。約1500人に1人の割合で、起こるとされています。

本来、肺から左心房に入る新鮮な血液は、左心室を経て全身に送られますが、左心房の血液の一部が穴から右心房に流れ、肺に送り出される血液の量が増えてしまいます。

そのため、心臓や肺に負担がかかり、心臓が肥大するほか、肺に余分な血液がたまって、うっ血状態が続き、風邪や肺炎などにかかりやすくなります。幼児、小児期には症状が出ないことが多いいですが、進行すると、肺高血圧症という肺血管の病気や不整脈などを引き起こすこともあります。

これまでの治療法は、胸を切開して心臓の穴を直接縫い合わせるなど、外科手術が一般的でした。しかし、胸に約10センチの傷が残り、2-3週間の入院が必要になります。


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カテーテル治療

これに対し、新しい治療法は、穴をふさぐ特殊な「閉鎖栓」を使います。形状記憶合金(ニッケルとチタン製)の細い針金を、二重の“傘”のように編んであります。

この栓を折り畳んでカテーテル(直径約3ミリ)の先端に入れ、足の付け根の静脈から挿入、エックス線や超音波の画像で見ながら、左心房に到達したところで、まず一つの傘を開きます。穴の位置に合わせて、もう一つの傘を開き、二つの傘で穴の周囲を挟み込んでふさぎます。

穴をふさぐ部分の栓の直径は、病状により6ミリから3・8センチまでさまざまです。治療は約2時間ほどで終わり、1週間程度、入院します。

このカテーテル治療は約8年前に米国で始まり、世界に広がりました。約3万人が治療を受けたとみられ、米国のデータでは98・5%で有効でした。

しかし、穴の大きさが3センチ以上になると、閉鎖栓の取り付けが困難になります。手術に比べ安全性は高いですが、治療後に栓が心臓の壁に当たって新たな穴があき、外科手術に切り替えた例もあります。

カテーテル治療を行っている病院

日本では、治療技術の向上を図るため、国立循環器病センター小児科部長の越後茂之さんが中心となり、研究会を設立しました。

治療を実施できる施設の条件として

1.先天性心疾患に対する、カテーテル治療の実施件数が一定以上ある

2.研究会が定めた新治療の教育プログラムを、受けた医師のみが行う

などを課しています。

現在、治療できる施設は国立循環器病センター、埼玉医大、岡山大の3か所ですが、「今後は増えるとみられます」と越後さんは話しています。閉鎖栓が輸入承認された昨年3月以降、計59人に治療が行われ、栓の脱落もなく、全例で経過は良好でした。

埼玉医大助教授の小林俊樹さんは「欧米では広く実施され、確立された医療です。肺高血圧症など合併症が出る前に治療を受けて欲しい」と話しています。

関係医療機関

国立循環器病センター

埼玉医大病院

岡山大学病院


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